肝臓はお腹の右上部を占める臓器で、重さは概ね1kg~1.5kg。体の中では一番大きな臓器であると言えます。肝臓は他の臓器と比べていろいろと異なった、特有の構造的な特徴が備わっています。例えば、通常全身には酸素や栄養分を運ぶ「動脈」とそれらが使われた後の血液を心臓に返す「静脈」があります。肝臓にはこれらの他に腸管から吸収された物質を一旦肝臓に流入させる「門脈」という血管が存在します。口から摂取されるものとしては体の「栄養分」になるものもあれば、「毒」になるものも存在します。これらを仕分けするのが肝臓であり、その仕分けの「窓口」となるのが門脈と考えていただければいいのではないかと思います。
また、肝臓には「胆管」というものが存在します。皆さん、「胆汁」というと「胆嚢」で作られるもの、と思われている方もいらっしゃるのではないかと思います。胆汁を作るのは胆嚢ではなく、実は肝臓なのです。胆嚢はあくまで胆汁を貯めておく袋ということになります。胆汁の主な働きとしては肝細胞(肝臓の中で体に必要な成分を作ったり毒になるものを処理したりするメインの細胞)で仕分けされた有害物質や老廃物の排泄、また特に脂肪の吸収などに大きな役割を果たす胆汁酸などを含んでいます。胆汁は肝臓から総胆管を通り、途中でやはり強力な消化液である膵液の通り道、膵管と合流して十二指腸に流れ込み、体に必要な栄養分の腸管での分解、吸収を助ける働きと毒素、老廃物を便として排泄する働きを果たすことになります。
このように肝臓は他の臓器とはかなり違う構造的な特徴があり、これらの構造がこれから述べる肝臓の多様な働きに関係しているものと考えられています。