肝臓には様々な働きがありますが、「人間が生存するために必要な物質を作り出す」、すなわち合成の働きと、「人間が生きていくのに不要、あるいは有害な物質を選別して体外へ運び出す」、すなわち排泄の働き、という大きな二つの役割があると考えていただくとわかりやすいと思います。
「生存するために必要な物質」。人間に必要な三大栄養素としては「糖質」、「タンパク質」、「脂質」があることは皆さんも学校で学んだことはあるかと思います。肝臓はこの全ての栄養素の合成に関わると言われています。いわゆる「血となり肉となり」は肝臓がないと成り立ちません。
また、肝臓は「毒素の排泄」という大事な働きもあります。この排泄には肝細胞で無毒化して(場合によっては選別してそのまま)、血中に排泄するルートと、肝細胞でできる胆汁とともに排泄する、という二つのルートが存在します。血中に排泄されたものは最終的には腎臓から尿として、胆汁とともに排泄されたものは十二指腸を通って最終的に便として体外に排出されることとなります。
よく肝臓は「沈黙の臓器」という言葉で表現されますよね。まさしく肝臓の働きを的確に表した言葉だと思います。肝臓を全て肩代わりする人工臓器を作ろうとすると、おおよそ小さな工場1個分のスペースが必要と言われています。すなわち、このように多様なニーズに対して、文字通り「何も言わずに黙ってよく働く」臓器なのです。ただ反面「何も言わない」臓器であるが故に、よほどのことがない限り我慢強く耐えてしまう臓器でもあり、悲鳴を上げ始めた頃には実は手遅れ、ということもよくあります。「悲鳴を上げるまで黙って耐えてしまう」これが肝臓病の恐ろしい所でもあります。