肝臓の病気

肝不全とは?-生命に関わる深刻な状態

皆さん、「肝不全」という言葉を聞いたことがありますか?

肝不全、文字通り「肝臓が働きを全うすることが不可能になる状態」すなわち、肝臓が働かなくなる状態を指します。肝臓が働かなくなると具体的にどんなことが起こるのでしょうか?

「肝不全」には肝臓の機能が数日から数週間という比較的短い期間で働かなくなる「急性肝不全」という状態と肝臓が少しずつ壊れていくことで数年から数十年単位で肝臓の働きが悪くなる「慢性肝不全」という状態があります。「肝硬変」による肝不全が「慢性肝不全」の代表格と考えていただいて差し支えないと思います。

肝臓には前の章でも述べさせていただいた通り、「合成」と「排泄」という二つの大きな働きがあります。肝不全になるとタンパク質の合成の低下に伴い、浮腫(むくみ)、腹水、胸水、タンパク質の一つである凝固因子が低下することによる出血傾向、また排泄が低下することにより神経に毒性のある物質がたまることによる「肝性脳症」や胆汁がうまく作られないことで起こる「黄疸」などの症状が出現します。

このように「肝臓が働きを全うするのが不可能になる」いわゆる肝不全の症状を考える時には前章で述べている肝臓の働きを考えていただくと何が起こるかよくわかると思いますし、肝不全になると実に多彩な症状が出現するのがおわかりいただけたかと思います。また、このように「合成」、「排泄」の中心にある肝臓の働きが全うできなくなることが生命にかかわる深刻な事態であることもよくおわかりいただけるのではないかと思います。