肝臓の病気

肝臓移植-肝臓を助ける最終手段…でもどうやったらたどり着けるかわからないあなたへ

肝臓移植とは読んで字の如しではありますが、何らかの原因で「肝不全」に陥り生命が脅かされる状態になった時に自分の働かなくなった肝臓を摘出して、代わりに他人の健康な肝臓を「移して植える」治療になります。肝臓移植で提供される健康な肝臓の種類によって「脳死肝(臓)移植」と「生体肝(臓)移植」の2つの方法があります。前者はいわゆる「脳死状態」になられている方から肝臓を提供していただき移植するという方法であり、後者は「生きている体」から肝臓の一部を提供していただき移植を行う、という方法になります。

現在では日本でも生体、脳死どちらの肝移植も受けられることになっています。その比率は概ね生体が80%強、脳死が20%弱というところです。ただ、最近では脳死肝移植は着実に数は増えてきております。これには2010年に行われた臓器移植法の改正が大きな役割を果たしたと考えられます。法律改正前は「脳死」と判断された場合、その御家族の臓器提供の同意のみならず「生前における本人の臓器提供の意思」が確認できなければ臓器提供ができないルールになっていました。これが法改正後は、必ずしも本人の意思が確認できなくても、御家族の同意があれば提供可能、ということになりました。これによって法改正までは年間10例あるかないかという臓器提供が2023年にはついに100例を超えました。ただ、日本全体で肝移植が必要と考えられる患者さんは年間400-500例程度と考えられ、まだまだドナーとしては不足しているのが現状です。

どちらがいい、悪いの優劣の問題ではなく、生体肝移植でも提供したいという提供者の気持ちを考えると存続すべき治療選択肢の一つではあると思うのですが、やはり健康な方にメスを入れる、というのは本来であれば避けられるのが理想的ではありますし、やはり脳死/生体の割合は欧米並になるのが本来の移植医療のあるべき姿ではないかと思います。

現在、日本で脳死、生体の両方の肝移植を行っている施設は23施設、生体肝移植のみ行っている施設が14施設の計37施設あります。これらは日本臓器移植ネットワークや日本肝臓学会のホームページにも掲載されていますし、また私自身も長らく肝移植に内科医として携わって参りましたのでどこに行ったらいいかわからない場合は気軽に相談していただければお答えすることはできると思います。