「がん」―今や日本人の2人に1人が一生のうちに何らかのがんにかかるという非常に頻度の高い病気になってきています。「がん」=不治の病、がんにかかってしまったらそのまま死に直結する、という非常に怖ろしいイメージを持っておられる方も少なくないと思います。厚生労働省の統計によると、以前は日本人の死因のトップだった脳血管障害(いわゆる脳卒中)を抑えて、1981年からは悪性新生物(いわゆるがん)がずっと死因のトップを走っています。
ただ、一方では医療の進歩に伴いがん患者の生存率は着実に上昇しています。この進歩に大きく寄与したものの一つが「がん検診」と言えるのではないかと思います。がん検診の目的は自覚症状のない、一見健康に見える方に検査を行うことでがんを「早期発見」して治療につなげる、というのが大きな目的です。一般に自覚症状の出てしまっている時期にはいわゆる「進行がん」になっていることが多いです。がんは当たり前ではありますが、進行がんになってから治療するよりも早期のうちに発見して治療を行った方が生存率は高くなります。
国立がん研究センターの「がん統計」によると日本人のがん罹患数は大腸、肺、胃の順に多く、一方死亡数では肺、大腸、胃の順になります。ある意味これら3つのがんは検診に力を入れるべき病気であると言えるのではないかと思います。またこれらは性別による違いもあります。がん罹患数では男性では前立腺、大腸、肺の順、女性では乳房、大腸、肺の順に、また、死亡数は男性では肺、大腸、胃の順、女性では大腸、肺、膵臓の順になっております。
現在、厚生労働省ががん検診の指針を定め、市町村に推進しているがん検診としては、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの5つになります。これらの検診はがんの早期発見、およびがん患者の生存率の向上につながってきているのは事実です。特に「自分は健康」と思っている自覚症状のない時期に検診を受けられることをお勧めします。