健康管理

内科でも遭遇する精神疾患―一見内科的症状を示す精神疾患と精神科的症状を示す内科疾患

一般内科の外来を行っていると実に様々な症状を訴えて来られる患者さんがいらっしゃいます。その中には我々内科医の診断に対する知識に当てはめて考えてみると「ん?」とふと考え込んでしまい、疾患が思い当たらない患者さんも稀ではありません。そのような患者さんに対し、「精神科的疾患」を当てはめてみると診断に行き着く場合もあったりします。また一方でいかにも「うつ病」や「統合失調症」のような典型的な精神科疾患の症状を呈しているため精神科に受診したが実は内科的な疾患であった、というケースも少なからず存在します。

例えば「うつ病」は「憂鬱」という言葉からも想像できるように、何となくいつも憂鬱そうに見えて、活気がなく、症状の重い方はいわゆる「自殺願望」を持つことでひどいと死に至る病気、というイメージを持たれているのではないでしょうか。ただ、一方で明らかな「憂鬱」に伴う症状が前面に出ず、「食欲不振」「不眠」「全身倦怠感」と言った一見すると内科疾患を考えさせる症状を訴えて内科外来を受診されることもあります。例えば「全身倦怠感」を主訴(主な症状)として来られた患者さんに「最近眠れているか」「食欲はあるか」という質問をしてみて、それらの症状が週~月単位でそろって見られる場合に「うつ病」の診断にたどり着く場合もあります。

反対に一見すると精神疾患に見える症状の背景に内科疾患が隠れている場合もあります。例えば低酸素血症、脳梗塞、脳出血などの脳卒中、てんかん、肝性脳症、低血糖などの代謝性疾患、ナトリウムやカルシウムなどの電解質異常、薬剤、睡眠時無呼吸症候群、パーキンソン病などの神経変性疾患、甲状腺、副腎、下垂体などの内分泌疾患、悪性新生物や自己免疫性疾患、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)、周期性四肢運動障害など様々な内科的疾患で精神科的な症状が前面に出るケースがあると考えられています。

このように「こころ」と「身体」は密接な関係にあると考えられます。そのため、精神状態の変化が身体症状を引き起こすことも少なくありません。何らかの身体症状のある方でもきちんと検査を受けて何もなければとりあえず重篤な内科疾患はないと考えて安心していただいてもいいと思います。一方で、検査で異常のない症状を有する方の中で10%が12ヶ月以内に他の診断が判明することがあるというデータも存在します。例えば症状が続く場合は、3ヶ月から半年後くらい(一回異常なし、という判断であればこれくらいの間隔での再検査で大多数は手遅れにはならない)に再検査、という感じで受診していただければいいのではないかと思います。