健康管理

高齢者における医療の特徴―訪問診療で高齢者に関わるようになって思う事

「人は必ず老いる」これは人間だけでなく生物全てに与えられている宿命ではあります。「老化」が進むともちろん若い頃と同じようには行かなくなります。若い頃に比べてなかなか疲れが取れなくなる、動きがどうしても遅くなる、目がうまく見えない、耳がうまく聞こえない、記憶力が落ちた、あちこちが痛くなる、など。20代、30代の頃の自分と比べると情けなくなることはよくあると思います。このように「老化」が進んだ高齢者特有の健康に関する問題に触れていきます。

まず高齢者の多くは抱えている持病が一つではなく複数という方が多い、という点です。このようにいろいろな疾患を抱えているが故に起こってくる一つの大きな問題が「ポリファーマシー」です。「ポリ=たくさんの」「ファーマシー=薬局」という意味で、この場合、高齢者が多疾患を抱えているために「たくさんの薬」を処方されてしまう、という問題です。薬の種類が増えれば増えるほど薬剤の「相互作用」によって例えば薬剤の血中濃度が上がり過ぎて副作用が強く出過ぎてしまったり、反対に下がり過ぎて薬の効果が弱くなったり、などの作用が出るリスクもあります。

また、アドバンスドケアプランニング(ACPと略します)という言葉を御存知でしょうか?末期がん患者さん、あるいは高齢者の方など、いわゆる「最期」を意識しなければならない時期の患者さんに対しては、なるべく幸せな形、苦痛のない形で最期を迎えていただく、というのも我々医療者が考えなければならない重要な問題の一つです。人生の最期を迎えるにあたって、どのような医療・ケアプランがいいかを考えていき、御本人、御家族ときちんと合意を得て進めていく、というのがこの言葉の意味です。また一方で、人の気持ちというのは時によって変わる、というのももう一つの特徴です。一旦決めてしまった方針に縛られる必要はなく、都度方針を確認することも大事だと考えられています。

「健やかに老いる」、「健康長寿」は新たな日本社会の重要なテーマになるのではないかと思います。そのためにはこのような高齢者の特徴をよく知ることで、「元気な高齢者」を増やしていくのも大切なことだと思います。