肝臓の病気

自己免疫性肝疾患―多い病気ではないが知っておくべき慢性肝疾患

「自己免疫」という言葉、聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。そもそも「免疫」というのは「自己」と「非自己」を識別するメカニズム、というように説明できると思います。ただ、そう言われても…ちょっとわかりにくいですよね。

遠い昔から人間は様々な病原体と戦ってきました。すなわち自分の体には存在しない病原体が体の中に入ってきた時に速やかに自分の体にないものと認識して、攻撃すべき目標として設定する、その際には自分の体の細胞を攻撃しないようにするメカニズム、それが「免疫」という現象です。すなわち「免疫」とは「異物」を攻撃するためのメカニズムだけでなく「自分の体を攻撃から守る」メカニズムも併せ持っています。

この自分の体を守るはずの「免疫」が時に暴走を起こしてしまい、本来対象とすべき「異物」だけではなく。自分の体の細胞まで壊してしまう、という現象が存在します。これを「自己免疫」といい、自己免疫が関係する病気を「自己免疫性疾患」と言います。この「自己免疫」現象が肝臓に起こる病気として「自己免疫性肝疾患」という疾患群があります。この仲間として挙げられる病気として「自己免疫性肝炎」「原発性胆汁性胆管炎」「原発性硬化性胆管炎」があります。これらの疾患には「自己免疫」のみでは説明できない部分もたくさんあり、多くは原因のわかっていない、厚生労働省指定の難病にもなっている疾患です。決して多い病気ではないのですが、「肝臓の病気の一つ」として知っておいていただいてもいいと思います。